高阪鈑金工業SINCE 1926 — 大津・坂本
台風で雨樋が外れ、屋根の瓦も一部が飛んだ、というご相談から始まった工事です。屋根を確かめると、同じ家のなかでも屋根材によって傷み方が違っていました。塗装で仕上げた屋根と、新しい金属屋根に葺き替えた屋根。その分かれ目をご説明します。
最初のご相談は、台風の被害でした。風で軒樋(のきどい/屋根の先端を横に走る樋)が外れ、大屋根の瓦も一部が飛んでしまったのです。
風で飛ばされた、物が当たったといった自然災害による傷みは、ご加入の火災保険で修理費用がまかなえる場合があります。今回は火災保険で直すことになり、保険の内容に合わせてお見積りを出し、工事を進めました。
屋根に上がってみると、とくに気になったのが屋根材によって傷み方がまったく違っていたことです。
外壁は台風の被害ではなく、年数による傷みです。塗料の剥がれが目立っていました。屋根と雨樋の工事で足場を組むので、その機会に外壁もまとめて塗り直せば、足場代を二重に払わずに済みます。
お客様のご希望をうかがいながら、屋根の補修と塗装・屋根の葺き替え・雨樋の掛け替え・外壁塗装を、ひとつの工事として行うことになりました。
この建物の屋根には、種類の異なる2つの屋根材が使われていました。まず確かめたのは、この違いでした。
実際に上がると、この違いがそのまま状態に表れていました。大屋根のモニエル瓦は、塗装でまだ十分にもつ状態です。汚れや色あせはあるものの、洗って塗り直せば屋根を守る力を取り戻せます。
難しかったのは、台風で飛んだ瓦の補修です。モニエル瓦はすでに製造されておらず、同じ瓦が手に入りません。そこで、同じモニエル瓦が葺かれていた玄関上の下屋根を葺き替え、そこから外した瓦を大屋根の補修に使いました。形も色も同じ瓦で、大屋根を直すことができます。
いっぽうU瓦の屋根は、劣化が激しく進んでいました。苔と劣化が広がり、屋根材そのものが傷んでいます。塗装は屋根材を保護する仕上げであって、傷んだ屋根材を元に戻すものではありません。ここは葺き替えるほかに選択肢がありませんでした。
そこで、同じ家の屋根でありながら、屋根ごとに工法を分けることにしました。
なお2.5寸勾配の屋根は、もともとコロニアル(薄い板状のスレート屋根材)が葺かれた上に、カバー工法でU瓦が重ねられていました。今回はU瓦だけを撤去し、コロニアルはそのまま残して、その上に新しい屋根を施工しています。コロニアルを残したのは、撤去と処分の費用を抑えるためです。
「屋根は塗装か葺き替えか」と二択で考えられがちですが、実際には屋根ごとに答えが違うことがあります。必要なところにだけ手をかける。それが費用の面でも建物の面でも、無理のない選び方だと考えています。
2.5寸勾配の屋根は、上に重ねられていたU瓦の撤去から始めました。撤去した屋根材は産業廃棄物として運び出します。
U瓦を外すと、もとから葺かれていたコロニアルがあらわれました。コロニアルはそのまま残し、その上にルーフィング(屋根の防水材)を敷き込みます。今回はタディスホワイトという製品です。
雨を防ぐのは屋根材ですが、その下のルーフィングは、屋根材が年数とともに傷んだときに、雨水が下地の木に届くのを防ぐ備えです。仕上がれば見えなくなる部分ですが、手を抜かずに施工しています。
その上に、金属屋根材「S&Sルーフワイド」を葺いていきました。軽く、緩い勾配にも対応できる屋根材です。屋根が軽くなることは、地震のときの揺れを抑えることにもつながります。
手間がかかるのは、平らな面ではなく棟(むね/屋根のいちばん高い部分)や、壁と屋根がぶつかる取合いです。雨漏りは、こうした形が変わるところから起きます。板金を現場に合わせて加工し、水の通り道をつくりながら納めていきました。
玄関上の下屋根は、モニエル瓦を撤去後、木下地を金属屋根用に施工し、金属屋根材「S&Sルーフワイド」で葺き替えました。大屋根は、台風で飛んだところをその瓦で補修し、高圧洗浄で汚れと苔を洗い落としてから塗装しています。塗装は専門の協力業者とともに進め、外壁の塗装も同じタイミングで行いました。
別棟の納屋は、傷んだポリカ波板をいったん撤去し、下地の木材を補修・補強したうえで、鉄板小波(てっぱんこなみ/波型の鉄板屋根材)を施工しました。母屋とあわせて、敷地全体の屋根がひととおり新しくなっています。
仕上がりを離れて眺めると、塗り直した大屋根も、葺き替えた屋根も、同じように黒く落ち着いた色でそろっています。どちらが塗装でどちらが葺き替えかは、ぱっと見では分からないかもしれません。
けれど中身は違います。大屋根は、まだ十分にもつモニエル瓦を補修し、洗って塗り直したもの。U瓦の屋根は、傷んだ屋根材を撤去し、防水層から入れ替えたもの。屋根ごとに、その状態に合った方法で仕上げています。
外れていた雨樋も新しく掛け替え、外壁も塗り直しました。台風の被害の修理とあわせて、住まいの外まわりがひととおり新しくなっています。
今回の工事の範囲は、ほとんどがお客様ご自身のご希望によるものです。私たちは屋根に上がって一つひとつ状態を確かめ、それぞれに合った工法をご説明しました。お客様のご希望を、確かな納まりで形にする。それが今回の私たちの役目でした。
ご協力いただいたお客様、ありがとうございました。
工法ごとに、工事前と工事後を並べました。写真をクリックすると拡大表示します。
塗装でまだ十分にもつ状態だった屋根です。台風で飛んだ瓦を補修し、高圧洗浄で汚れと苔を落としてから塗装しました。屋根の上に並んでいる金具は雪止めで、積もった雪が一度に滑り落ちるのを防ぐためのものです。



2.5寸勾配の、緩い傾きの屋根です。上に重ねられていたU瓦を撤去し、残したコロニアルの上に、新しい金属屋根材「S&Sルーフワイド」を施工しました。上段が工事前と工事中、下段が工事後です。




母屋とは別に建っている納屋です。傷んだポリカ波板を撤去し、下地の木材を補修・補強してから、鉄板小波(波型の鉄板屋根材)で葺き直しました。ほぼ同じ位置から撮影しています。


仕上がってしまえば見えなくなる部分ですが、屋根がどれだけもつかは、この段階で決まります。ふだんお客様の目に触れない工程を、順にご紹介します。






足場を解体したあとの様子です。屋根も外壁も雨樋も、まとめて新しくなりました。






風で飛ばされた、物が当たって壊れたといった自然災害による建物の傷みは、ご加入の火災保険で修理費用がまかなえる場合があります。今回の工事も、台風で雨樋が外れ、瓦が飛んだことから、火災保険での修理をご依頼いただきました。
ただし、保険が使えるかどうかを決めるのは保険会社であって、工事業者ではありません。「必ず使えます」「保険で無料になります」といった説明をする業者にはご注意ください。
私たちができるのは、傷んでいる箇所を写真で記録し、修理費用のお見積りをお出しするところまでです。
屋根材そのものの状態によります。屋根材が健全なら塗装で十分です。いっぽう割れたり層になってはがれたりしていれば、塗装をしても長くもちません。
塗装は屋根材を保護する仕上げであって、傷んだ屋根材そのものを元に戻すものではないからです。
今回のように、同じ家のなかでも屋根材によって答えが違うこともあります。屋根に上がって確かめないことには判断できませんので、まずは現地調査をご依頼ください。
既存の屋根を撤去せず、その上に新しい屋根材を重ねて張る工法です。撤去する量が減るぶん、工期と廃材の処分費用を抑えられます。
ただし屋根材を何層も重ねると、そのぶん屋根が重くなり、建物への負担が増えます。今回は、以前カバー工法で重ねられていたU瓦の劣化が激しかったため、U瓦だけを撤去しました。その下のコロニアルは、撤去と処分の費用を抑えるために残し、その上に新しい屋根を施工しています。屋根工事のご案内もあわせてご覧ください。
屋根や高い位置の外壁を触る工事には、足場が必要です。足場は組むたびに費用がかかるので、屋根と外壁を別々の年に工事すると、足場代を二度払うことになります。
今回のように、足場を組む機会にまとめて手を入れるほうが、結果として費用を抑えられることが多くあります。
とはいえ、必要のない工事までおすすめするつもりはありません。現地を拝見したうえで、いま必要なもの・あとに回せるものを分けてご説明します。